タカクラは思った。
新約聖書によれば、預言者エリヤは、イエス・キリストの変容のときに、創造主なる神の起こす大いなる雲の中に、預言者モーシェとともに現れ、そして、また雲と共に天に消えた。それを使徒ピーターは見ていた。その様子は、バチカン・サン・ピエトロ大聖堂のエントランス近くに飾られたラファエロの名画『キリストの変容』に描かれている。
タカクラは、その絵が好きだった。
三位一体、父と子と聖霊、・・・主イエスはまばゆく変容し、ピーター(ピエトロ)の前で光り輝き、天地の創造主の子としての顕現をあらわした。
タカクラは思う。
それは、きっと、圧倒的な光景だったろう。
あまりのパワフルな光景だったろう・・・。
タカクラは、それを思うとき、なんとも言えない気持ちになるのだ。
その光景を見ることが出来たら、とおもう部分と、あまりの荘厳さと、おそれおおさと、入り混じるのだ。ラファエロの描いたものを見ながら、想像するのが自分には合っているのだ、とも思うのだった。
イエスは、ペトロ、それにヤコブとその兄弟ヨハネだけを連れて、高い山に登られた。イエスの姿が彼らの目の前で変わり、顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなった。見ると、モーセとエリヤが現れ、イエスと語り合っていた。ペトロが口をはさんでイエスに言った。「主よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。お望みでしたら、わたしがここに仮小屋を三つ建てましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、もう一つはエリヤのためです。」ペトロがこう話しているうちに、光り輝く雲が彼らを覆った。すると、「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者。これに聞け」という声が雲の中から聞こえた。弟子たちはこれを聞いてひれ伏し、非常に恐れた。イエスは近づき、彼らに手を触れて言われた。「起きなさい。恐れることはない。」彼らが顔を上げて見ると、イエスのほかにはだれもいなかった。
マタイは、そう伝える。
ピエトロが、モーシェやエリヤと語り合うイエス(イェーシュア)を見る事は大切な出来事だった。
天と直接繋がる存在を見ることは・・・。
エリヤは、後継者エリシャの見ている前で、神の火の戦車とともに、つむじ風、おおいなる風に乗って天に去り、神の元に行った、・・・それ以後エリシャはエリヤを見なかったという。
この世界には、人間の創造を絶することが起きる。
われわれの想像力などを遥かに吹っ飛ばす、神の栄光が・・・。