そうだ。
 私は、自分の頭の中で友人から聞いた噂話の『クレーター』を空想していただけだったのかもしれない。このキャンプ場を使った思い出もない。だが、このキャンプ場でキャンプをした、という空想を頭の中で構築していたのだ。なぜか?
 そう、私はあのキャンプに行けなかったのだ。私の他の全ての同級生が参加したキャンプだったのだが・・・。私は行けなかった。当時通っていた学習塾の合宿があったからだ。つぎの日、学校でキャンプでの出来事を友人らから聞き、行けなかった事が悲しくなった・・・。すごく楽しかったらしい。それは、私のエレメンタリースクール時代の『何かの欠落』となった。
 その後、同級生の友人らとの関係は、なんとなくよそよそしいものになっていった。
 『彼ら』と『私(ぼく)』という隔絶された雰囲気がどこか漂った。
 私は『欠落』を補完するように、友人らのお喋りからの情報を空想によって再構築し、『想像上のキャンプの記憶』を脳内につくりだしたのであった。
 私の真剣さが、その記憶をいっそうリアルなものにした。子供が何かに真剣になるとき、恐るべき力を発揮するものなのだ。

 湖を見ながら、私はあの時代に私が感じていた事をリコールした。

 つまり、この湖が隕石で出来たクレーターであるという確証は私には無いのだ。
 だが、この湖には何か得体のしれない空気が漂って居る・・・。

 ブラックウッドは太古から宇宙の神秘と無縁ではない。近隣の村には『天翔ける舟』が降りて来ていたとされる大岩もある。其の村には天文台が在るのだが、宇宙からの訪問者がそこで何度も目撃されたという情報もある。

 しばし岸から湖面を眺めたあと、私はそこを去り再びパジェロミニに乗り込んだ。
 東山(通称キャスルヒル)へ向かう為だ。ダッシュボードに数日前に買って忘れていたミルキーチョコが入っていた。疲れた頭には丁度良い。

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