南山を麓まで下った。
南山は古くから人々が住みついていた。その中腹には仏教徒が祈りの時に使用する、線香を生産する手工業があった。
山幅は広く、Y川に沿って広がっている。Y川は南山を背にすると右が上流となる。トラッカーらがよく使う道路もY川に沿っている。Y川上流の方向へ向かえば北熊本(アッパー熊本)に行ける。
南山の麓から三つの道に分かれる。右へ行くと山深く、シャーロック・ホームズとモリアーティが決闘した断崖のような光景がある。左へ行くとY川の下流へ向かって進むことになる。こちらはうっそうとした南米的ジャングルのような道になっている。かつて、この道の入り口には遊郭があったという。もう少し進むと映画『キャット・ピープル』の舞台のように、猫の一族がたむろしている木々が現れる。この道は散歩するには面白い。その先に『南城の古塔』と呼ばれる遺跡が在り、そこから向こうがトラッカーたちの集荷場。(『南城の古塔』は『南総里見八犬伝』に登場しそうな雰囲気。)
三つ又の中央を行くと、ミドルスクールが在る。その脇からキャスルヒルへの登山道に入れる。キャスルヒルの歴史は古く、ブラックウッド・エリアの歴史的キリシタン大名であった田中バルトロメオの時代に遡る事が出来る。
登山道を登っていく。
ブラックウッドの人口が近年著しく減少した為、登山者も減りキャスルヒルのかなりの面積が原生林に還ろうとしていた。
だが、原生林の奥に、誰が造ったのか、・・・チャペルを見つけた。
『聖マザーテレサチャペル ブラックウッド』、そう書かれていた。