柳川の蔵鷹

スクリプト: YOSHIMAX

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<現代:九州ゴッドウィン地方>
蔵鷹が、路地を歩いていた。
路地には「カルカッタ発インド料理店」の看板が掲げてあった。
蔵鷹は、そのインド料理店に入った。
蔵を見ると、オーナー(高倉健似)は挨拶した、
「あ、いらっしゃい!」
蔵は、にこりと笑った。
オーナーは言葉を続けた、
「久しぶりだね、蔵鷹さん!」
蔵鷹は答えた、
「しばらく、柳川を考古学的に調査していたんだよ。」
オーナーは言った、
「柳川って、あの東洋のベニスって言われてる町だね。」
蔵鷹はオーナーに言った、
「そうそう、よく知っていらっしゃいますね!」
オーナーは言うのだった、
「私、勉強家なのよ、それで、今日は何にします??」
蔵鷹は言った、
「うーん、カレー中辛でお願いします。それと、ナンでお願いします。
食後はホットチャイで。」
オーナーは蔵に聞いた、
「柳川で何か見つけた?」
蔵鷹はナンをかじりながら答えた、
「中世の筑後国主、田中バルトロメオ吉政が、柳川の地下に建設した
という、秘宝の部屋・・・。」
オーナーは、ちょっと驚いて聞いた、
「え、それを見つけたの? たしか、田中バルトロメオは、

あの時代のクリスチャン大名・・・。
蔵鷹は答えた、
秘宝の部屋は見つけられなかった。... ... ... そのことを記した、田中バルトロメオ

秘伝の巻物を発見はしたのだが。」
オーナーは首を傾げた。
蔵は続けた、
「秘宝の部屋の入口が分からないのだ。」
オーナーは蔵に言った、
「巻物には何と?」
蔵は言った、
「マルコポーロの心を調べよ、と。」
オーナーはまた、首を傾げた。
蔵は言った、
「おそらく、その秘宝は、マルコポーロが冒険で手に入れた何か、なのだろう。
その何かは、マルコの故郷ベネチアからローマに渡ったのだ。
だから、伊東マンショら4人の少年が、ローマから日本に持ち帰ったという品々の中に、
その秘宝があったのだ。そして、その秘宝は田中バルトロメオの元に渡った・・・。
それが、柳川の地下にあるという秘宝の部屋に隠されているのだ。」
オーナーは言った、
「なんか、スゲー。」
蔵はやや残念そうな顔で言った、
「だが、私に分かるのはここまでだ。
マルコポーロの心を調べる方法などはない。
そこで、あとのことは、八女の白壁の町にある本部の者に

さぐってみてくれ、とだけ言って、頼んだ。」

<八女の白壁の町の本部>
女性リサーチャー(ミシェル)がさわいでいた、
「あー、もう! こまったわ!
なぜ私の仕事場には、へんな話ばかりくるのかしら?
田中バルトロメオの秘宝をさがせ?
マルコポーロの心をさぐれ??
そして、このバーガスが持ち込んだ、へんな機械よ・・・」

そう、このリサーチャーの元には、難題がやってくる。だが、それは優秀であるが故。

蔵は、この八女に財団を構え、超自然の世界を研究してもいる。

その財団のバーガス・チャン氏もまた、リサーチャー・ミシェルに、

調べてくれるよう、かわった機械を持ち込んでいた。



<カレー屋(再度)>

食事が終わった蔵がオーナーに挨拶して店を出る。

すれ違いで、5歳くらいの息子を連れたシングルマザーらしい若い母親がカレー屋に入る。

母「あ、カレー、一杯ふつうのカレーをお願いします。」

オーナー「一杯?」

母「はい、それでお願いします。」

5歳の息子は喜ぶ。「わーい、カレー!」



オーナーは、2杯のカツカレーを持ってくる。

母「えっ?」

オーナー「あ、ひとつは余ってたから・・・。カツも2つの余りがあってさ。

のっけといたよ。もうすぐ、店じまいの時間だしさ。」

息子「わーい、カツ!カツカレー!」



その様子を店のドアの外側がら、ひっそり見ている蔵鷹。微笑む。

蔵鷹「ちょっと忘れ物を取りにかえってきたが … 。また今度とりにくるとしよう」

(蔵、去る。)



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<場所はかわり、 ・・・ 現代のモンゴルの平原、正午ごろ・・・>


少し風が吹いているようだ。丈の短い、緑の草花が揺れていた。

空は、少し白みがかった青空だった。大きな雲が静かに4つ、移動していた。

ヘリコプターの音がバタバタバタ・・・、と聴こえた。

それは、白いヘリコプターで、イタリアの考古学調査団のものだった。

機体にはそれを示す、ITALOの文字が書かれていた。

白いヘリコプターは草原に着陸した。プロペラの回転が停止した。

ヘリコプターのドアが開くと、中から考古学者ケン・ソーズマン博士が出てきた。

ソーズマン博士は、右手にパオズ(包子=肉まん)を持ち、それを食べながら話した、

「よい風の吹く、モンゴルの草原でパオズを食べる、すばらしい体験だ。

そうだろう? フビライ・ハーンもこうしていただろうか。」

ソーズマン博士を追って、ヘリのドアから出てきたキャメラマン(アルフレード)は、

そんな博士の様子をビデオカメラで撮影した。

ソーズマン博士は、そのカメラに向かって言った、

「かつて、ここにはフビライ・ハーンを頭としたモンゴルがあった。

この草原にも、彼の別荘があったに違いない! 私には見える、その時代の様子が。

そうだ、草原の脇を流れるあの川のそばに、フビライのパオがあっただろう。

フビライはそこで、マルコ・ポーロの父に命じたはずだ・・・・・。

アルフレード、そこへカメラを向けてくれるかい?」

アルフレードが川のそばにレンズを向けた。


<フビライ・ハーン統治時代のモンゴル。平原のパオ・・・・・>

たしかに、その草原にハーンのパオがあったのだ・・・・・。小川は料理づくりに役立っていた。

フビライ・ハーンは満面の笑みだった。

フビライは、(ベネチアの旅商人であった)マルコ・ポーロの父に言った、

「ポーロよ・・・。私の母は言った、栄光は神に帰するべきものである、と。

母はまた、神を畏れることは知識の始めだ、とも言った。」

マルコ・ポーロの父はフビライに答えた、

「フビライ様の母上は聖書の教えを聴いておられた。

私も、ベネチアの教会で、そのようなことを聞きました。」

フビライは、マルコ・ポーロの父に言った、

「4年の歳月をかけて、そなたの国、ベネチアから、このモンゴルまで

無事に来れたのは、そなたに天使の守りがあったからだろう。」

マルコ・ポーロの父は答えた、

「そう信じております。それを忘れないようにせねば、と思います。

故郷の神父が私に言いました、どこへでも旅して行きなさい、と。

そこには、すでに神様が先に行って、あなたの会う人の心に

準備していますよ、と。」

フビライは言った、

「あっはっは、そうだな。私の母はキリスト教徒であった。

そなたに命じる。キリストの教法に練達した者たちで、その神の啓示を

明確に語る力量を備えた賢者100名を、ローマ・カトリック教会から

モンゴルへ派遣して欲しい旨を教皇に伝えてくれ。

そして、又、エルサレムのイエス・キリストの復活が起こった聖なる墓に

ともされているランプから、少々の聖なる油を持ち帰ってくれないか。

私は、その油で灯される光を見たいのだ・・・・・・・。」


<現代。モンゴルの平原・・・>

ケン・ソーズマン博士がカメラに向かって喋った、

「キリスト教に関心を持っていたモンゴルの王フビライは、

キリスト教を広めるために、ローマ教皇に百人の神父の

モンゴル派遣を頼んだ。

モンゴルを訪れていたマルコ・ポーロの父が、

この依頼の手紙をモンゴルからローマへ運んだ。」

アルフレードはソーズマンに伝えた、

「ドクター・ソーズマン、もう少し、詳しくお願いします。」

ソーズマンは云った、

「マルコ・ポーロに関しては、東方見聞録を参照しよう。

マルコ・ポーロの口述をルスチケルロが本にしたのは、1298年だ。

マルコ・ポーロ自身は、オリエント世界で入手し持ち帰った宝によって、

巨万の富を得た。それで、ミリオーネ百万長者とあだ名された。

彼は、イタリア語以外に、モンゴル語、ウイグル語、ペルシア語、アラビア語、

そして中国語が分かった。」

アルフレードは言った、

「マルコ・ポーロの父の話から、もう少し詳しく。」

ソーズマンは云った、

「マルコ・ポーロの父は、ニコロ・ポーロといった。彼は弟マテオ・ポーロと共に

ベネチアから商品を抱えてコンスタンチノープル、現在のイスタンブールに到着。

そして、この2人は1260年、そこからさらに東方を目指し、

モンゴルのフビライ・ハーン宮廷に到着した。1264年だった。

2人は当時のモンゴル皇帝、フビライ・ハーンに手厚い待遇を受けたという。

フビライは、ニコロとマテオが語る、ラテン人に関する話を楽しみ、喜んだ。

そして、この2人をカトリック教会教皇の元へ、モンゴルからの使節として

派遣することにしたのだ。フビライは、このように、マルコ・ポーロの父を

送り出した。ベネチアに帰国したのは、1269年だった。」


<ベネチア・1271年>

マルコ・ポーロ(生れは現在のクロアチア領=当時はベネチアだった)は、

旅の支度をしながら、思っていた、

「私は今年、17歳になった。そして私は帰国した父と旅に出ることにしたのだ。

私は旅を選んだ。それは、全く恐怖がなかったわけではない。しかし、

まだ見ぬ世界への憧れはあった。

教会の神父は、われわれ人間は神のご計画の中にあると言った。

私の、この旅も、この旅で出会うことも、神のご計画なのだ。」


<八女の白壁の町の蔵財団本部>

女性リサーチャー、ミシェル・スズキがさわいでい

「このバーガスが持ち込んだ、へんな機械・・・・・・・・!!

ミシェルが困った顔をしているところに、バーガスがやってきた。

バーガスは挨拶した、

「や!ミシェル。」

ミシェル・スズキはバーガスに言った、

「バーガス、あなたが持ち帰った、この黄金像、

やはりただの置き物ではなかったわ。

これは、つまり、タイムマシンなのよ。」

バーガスは言った、

「やはり、そうか・・・。」

ミシェルはさらに説明した、

「でもね、どんなエネルギーで動いているのか、

それは私には分からなかった。

私のエレクトロニクスの知識では太刀打ち出来ないわ。

でも、カバーを開けてみると、エネルギーカウンターが付いてた。」

バーガスは感心した、

「ほう・・・。」

ミシェルは続けた、

「それを見るとね、タイムトラベルが出来るのは、あと2回なのよ。」

バーガスはミシェルを見て、言った、

「ということは・・・。」

ミシェルは答えた、

「そう、往復で、あと一回ってこと。

どこかの時代に行って、あとは帰ってくるまで。

それでエネルギーを使い果たすわ。」


<エルサレム・聖墳墓教会(マルコポーロの時代)>

マルコは、会堂で祈った。

そして、ランプに差される油(聖油)を分けて貰った。

マルコは教会の中の学習室に入った。

マルコは言った、

「これから、モンゴルのハーン宮へと向かう。100名の修道士が欲しい。

付いてくる者はいるか?」

2人の修道士がたちあがった。


<砂漠>

マルコはラクダで砂漠を横切っていた。

かなりの砂嵐だ。

2人の修道士はマルコに話しかけた、

「我々には、これ以上は無理です。お元気で。」

去っていく修道士であった・・・。


<バダクシャン地方フェイザバード市>

マルコは、ある家の馬屋で一泊した。

ところが、朝になると、マルコは体が重く、起き上がれなかった。

熱があるようだ。

家の主人が出てきて、マルコの額に手を当てた。

家の主人は言った、

「かなり熱がある! マラリアだと思う。」


<現代。考古学財団カフェ>

ミシェル・スズキがバーガスに言った、

「マルコは常に移動している。

確実にマルコ・ポーロに会う方法は、マラリアで1年滞在することになった

フェイザバード市へタイムトラベルするしかない。でなければ、確実に

マルコに出会うポイントを見つけ出すことができない。」


<フェイザバード市>

マルコは、ある家のベッドに伏していた。

マルコはまだ熱があるようだった。

マルコは、意識が不確実の中で、思い出していた、

「こういう時、私は何故か教会で聴いた聖書の話を思い出す。

政治反逆者の疑いをかけられたパウロは、ローマへ連れていかれることに

なった。そのパウロを含めて275人が嵐の中、舟の上にいた・・・。

舟は難破し、マルタ島に上陸することになった。使徒行伝の中にある話だ。

マルタに上陸すると、パウロは住民に火を付けられ、また毒蛇に噛まれたが、

苦しまなかった。これによって、島民はキリストを伝えるパウロを特別視した。

パウロは島のローマ人首長、プーブリウスに招かれ、彼の父の熱病を癒した。」


<フェイザバードの馬小屋>

マルコは、馬小屋の天井に開いた穴から、夜空を見上げた。

月の光が雲の合間から漏れていた。

マルコの病は快方へ向かっていた。彼は瓶から少し水を飲んだ。

マルコは独り言を言った、

「ベネチアの神父は『神はいる』と言った。それは、今、この瞬間にも、

神は臨在しているという意味だ・・・。

神は今も臨在し、働いておられる・・・。

この夜の暗がりの中にも・・・。」

雲が動き、月の光が馬小屋を差した。

マルコは天井に開いた穴から見えた月を見、言った、

「そうだ、あの月を造ったのも神・・・。」

マルコの視線の向こうにある月は美しく光っていた。

マルコは穏やかな顔になり、呟いた、

「聖書の詩篇にこうあった・・・、夜を司る月と星を造った方に感謝せよ。

慈しみはとこしえに。」

マルコのそばに大天使ラファエルが見えた。


マルコは翌日、回復していた。


<アジア>

マルコはアジアの森を歩いていた。

マルコは歩きながら思った、

「旅は辛いこともあるが、なぜか、私の心を新たにしてくれる。

渓谷を歩き、その脇に沿って、山から流れくる小川の水音に癒される・・・。」


<森林>

マルコは、野獣の声を聴いた。

吠えたける野獣、トラがぎらりと、マルコを見ていた。

マルコと、トラは暫し、固まった。

やがて、トラは体の向きを変え、森林の奥へゆっくりと去った。

マルコは、ほっとした。聖霊に守られたんだ・・・。

聖霊は全知で、意志と思考を持って活動している・・・!

父と子と聖霊のみ名によって。アーメン!


<現代。八女>

バーガス・チャンはタイムマシンを作動させるのだった。

超空間に入るタイムマシンに、バーガスはつかまった。

バーガスは言った、

「すべるー。つるつる滑るー。」

超空間で手を滑らせて、予定しなかったところに落ちる。

そこは、教会堂だった。

バーガスはそこで、祈りをしているマルコ・ポーロを見つけた。

バーガスは思った、

「滑り落ちたけど、ちょうどよかったみたい・・・」


<アジアの教会の会堂>

教会の中に垂れ幕があり、つぎのように書かれていた。

わたしは、世の終わりまでいつもあなた方と共にいる。インマヌエル。

主は私を見つめておられる。私も主を見つめる。


マルコ・ポーロがつぶやく、
「神がモーセに現れた時、燃えているが決して燃え尽きない木の元に
彼を誘った。神はモーセの生来の好奇心を知っていたゆえに、

そのような不思議な現象において、モーセを神の元に引き寄せたのだ。

マルコ・ポーロにとっては、東方見聞録を残すことが、
神が彼に与えた使命だった。
マルコは富と名誉を手に入れたかもしれないが、それが彼の目的ではなかった。
彼が途方もない旅をしたのは、それらのためではなく、
彼に生来与えられていた、好奇心、冒険心のためであり、
彼は生まれながらの世界旅行家だった。
そこに民族主義を突破する人間の心があった。
それがマルコ・ポーロの心だ

バーガスは、現代に戻り、蔵鷹に伝えた、
田中バルトロメオが記した秘伝の巻物の中に縫い付けられていた、
ハートのペンダントを、大海に見立てた柳川の掘割の中心に落とすのだ。」

さっそく、柳川の掘割にむかった蔵鷹だった
そこで、船頭をやとい、舟を出した。
掘割の中央に舟を停止させてもらい、
田中バルトロメオのハートのペンダントを、そこから落とした。

すると、掘割は突然、波打ち始めた。
水面が膨らんできた。そこから塔が出現した。
それこそ、田中バルトロメオが密かに建設していた
柳川の地下の宝の部屋への入口であった・・・!


宝の部屋には、聖書の写しがあった。

聖書の言葉こそ、宝だったのだ。


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疲れている人、重荷を負っている人は、来なさい。
休ませてあげるから。

恐れないで。
君たちの髪の毛一本までも数えられている。

心を騒がせないで。神を信じなさい。

私は世の終わりまで、
いつもあなたがたと共にいます。

つるぎを取るものは、つるぎで滅びる。

子供のようにならなければ、天の国に入ることはできない。

小さな人々を一人でも軽んじないように気をつけなさい。

自分がしてもらいたいと思うことは何でも、
ほかの人にしなさい。

新しい掟を与えます。
私が愛したように互いに愛し合いなさい。

いちばん上になりたい人は
みんなの世話をする人になりなさい。

祈る時、だれかに対してわだかまりがあるなら、
まずゆるしてあげなさい。

祈り求めることは、すべてすでにかなえられたと信じなさい。
そうすれば、そのとおりになる。

空の鳥を見なさい。
天の父は彼らをも養ってくださる。

私は復活であり、命。
私を信じる人は、死んでも生きる。

私たちの天のお父さん。
あなたがすべての人から
賛美されますように。
あなたが治めてくださる
世界が来ますように。
あなたの思いが、天だけではなく、
この地上でも実現しますように。
生きるために必要な糧を、
今日私たちに与えてください。
私たちの間違いをゆるしてください。
私たちも相手の間違いをゆるします。
私たちが誘惑に
負けないようにしてください。
そして悪から救ってください。

神の国は、
君たちの間にあるんだよ。


END