Paul Delon's Film Festa

ポールドロン・エンターテインメント公式ログ

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 私は問う。
「この町ブラックウッドで何かが起きているのか?」

「正確に言えば、何かが起きつづけている。」
 ギャルソンKDG三船はそう答えた。

 そのとき、上空を軍用ヘリが横切った。
 VAD,VAD,VAD,VAD,VAD・・・・・、静けさを裂く轟音。
 ギャルソンは言う。「あれだよ。軍隊が関わっている。」
 私は聞く。「軍隊・・・。自衛隊か?」

 ギャルソンは空を見上げて言う。
「アメリカ軍だよ。今のはアメリカ軍のヘリだ。今の方向だとY川の下流の方、・・・トラッカー集荷場辺りの広場に着陸したな。ものものしいぞ・・・。おそらく、SCPと関係がある。」

「SCP?」

「SCPとは。自然法則に反した存在・物品・場所・現象をSCPオブジェクトとしてファイリングする動きさ。特別収容(スペシャルコンテインメント)プロトコル・ナンバリングで、多くの国際組織がファイリング競争を激化していると云われる。」

 SCP情報を多く保有する事が、今世紀の国の威信に関わるとさえ考える政治家・研究者らが居るという。一九五二年に米国ウエストバージニア州{FLATWOODS}に飛来したとされる『UFOと宇宙人のロボット』は、そのひとつとして、あまりに有名だ。

 ギャルソンは言う。
「Y川に沿って行ってみよう。途中、工事中で車両通行出来ない場所がある。だが、歩きで行ける距離だ。そうはかからない。」

 Y川に沿って歩いていくと『キャットピープル』のような猫一族の棲息区に入った。

 一人の女性が、猫に{RØDE}マイクロフォンみたいなものを差し出していた。


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 彼は頷いた。
 ギャルソンKDG三船、・・・私が10歳の頃のクラスメートだった。

 或る日、彼は別の国へと引っ越して行った・・・。

 私は彼に言う。
「たしか、君はフランス系アメリカ人だったよね。君との思い出は、よく一緒に登校したことだ・・・。君のママは、朝、僕が君を迎えに行ったとき、寒い日にはいつも僕にホット・ミロをつくってくれた。」

 ギャルソンは答える。
「ああ、そうだったよね。だけど、うちの家族は、あの年の終りに密かに海外へ引っ越した。お別れ会とかする時間も無かったね・・・。今は話せるけど、僕の父はアメリカ連邦警察FBIのアジア支部に居たんだよ。それで、ああいう形になった。」

 私は聞く。
「それで、・・・・・君は戻って来たのか?」

 ギャルソンは言う。
「そうだ。この町は変わってるからね。アーティストの僕には合うんだ。今は永住権を取ってツリーハウスに住んでいる。」

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 此のキャスルヒルには聖母マリアが出現したという地元の伝承もある。
 聖母マリアは世界のいろいろなところに出現している記録があるが、それは至福の出来事である。

 ブラックウッドは不思議な町だ。

 あの通り過ぎた川縁の少女は誰なのか、・・・私はあの場所へ戻る。

 其処にはアート・インスタレーションが在った。
 声が後方から聞こえた。
 「りんたろう君・・・。君は、水木りんたろう君か?」

 私の名を知る人物が居るとは・・・。一体誰なのか?
 私はふり返り、彼を見た。ライスボールのような頭は、私に彼の事をすぐに分からせた。
 「君は、あの・・・?」彼のフルネームが珍しかったから、・・・私はかえって無意識に其れをハッキリ記憶していたようだ。
 「ギャルソンKDG三船君。」

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 南山を麓まで下った。
 南山は古くから人々が住みついていた。その中腹には仏教徒が祈りの時に使用する、線香を生産する手工業があった。
 山幅は広く、Y川に沿って広がっている。Y川は南山を背にすると右が上流となる。トラッカーらがよく使う道路もY川に沿っている。Y川上流の方向へ向かえば北熊本(アッパー熊本)に行ける。
 南山の麓から三つの道に分かれる。右へ行くと山深く、シャーロック・ホームズとモリアーティが決闘した断崖のような光景がある。左へ行くとY川の下流へ向かって進むことになる。こちらはうっそうとした南米的ジャングルのような道になっている。かつて、この道の入り口には遊郭があったという。もう少し進むと映画『キャット・ピープル』の舞台のように、猫の一族がたむろしている木々が現れる。この道は散歩するには面白い。その先に『南城の古塔』と呼ばれる遺跡が在り、そこから向こうがトラッカーたちの集荷場。(『南城の古塔』は『南総里見八犬伝』に登場しそうな雰囲気。)

 三つ又の中央を行くと、ミドルスクールが在る。その脇からキャスルヒルへの登山道に入れる。キャスルヒルの歴史は古く、ブラックウッド・エリアの歴史的キリシタン大名であった田中バルトロメオの時代に遡る事が出来る。
 登山道を登っていく。
 ブラックウッドの人口が近年著しく減少した為、登山者も減りキャスルヒルのかなりの面積が原生林に還ろうとしていた。
 だが、原生林の奥に、誰が造ったのか、・・・チャペルを見つけた。

 『聖マザーテレサチャペル ブラックウッド』、そう書かれていた。


 そうだ。
 私は、自分の頭の中で友人から聞いた噂話の『クレーター』を空想していただけだったのかもしれない。このキャンプ場を使った思い出もない。だが、このキャンプ場でキャンプをした、という空想を頭の中で構築していたのだ。なぜか?
 そう、私はあのキャンプに行けなかったのだ。私の他の全ての同級生が参加したキャンプだったのだが・・・。私は行けなかった。当時通っていた学習塾の合宿があったからだ。つぎの日、学校でキャンプでの出来事を友人らから聞き、行けなかった事が悲しくなった・・・。すごく楽しかったらしい。それは、私のエレメンタリースクール時代の『何かの欠落』となった。
 その後、同級生の友人らとの関係は、なんとなくよそよそしいものになっていった。
 『彼ら』と『私(ぼく)』という隔絶された雰囲気がどこか漂った。
 私は『欠落』を補完するように、友人らのお喋りからの情報を空想によって再構築し、『想像上のキャンプの記憶』を脳内につくりだしたのであった。
 私の真剣さが、その記憶をいっそうリアルなものにした。子供が何かに真剣になるとき、恐るべき力を発揮するものなのだ。

 湖を見ながら、私はあの時代に私が感じていた事をリコールした。

 つまり、この湖が隕石で出来たクレーターであるという確証は私には無いのだ。
 だが、この湖には何か得体のしれない空気が漂って居る・・・。

 ブラックウッドは太古から宇宙の神秘と無縁ではない。近隣の村には『天翔ける舟』が降りて来ていたとされる大岩もある。其の村には天文台が在るのだが、宇宙からの訪問者がそこで何度も目撃されたという情報もある。

 しばし岸から湖面を眺めたあと、私はそこを去り再びパジェロミニに乗り込んだ。
 東山(通称キャスルヒル)へ向かう為だ。ダッシュボードに数日前に買って忘れていたミルキーチョコが入っていた。疲れた頭には丁度良い。

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